集中力

  仕事においても、プライベートにおいても現代人に必要な ”集中力”。仕事時間においても雑務を片付け、いざその時の課題に向かってもなかなか集中力できない時ってあると思います。この「集中力」(ハーバード・ビジネス・レビュー編集部)はアメリカの経営学誌「ハーバード・ビジネス・レビュー」の記事を抜粋したものを集めたもので、そんなに厚くないのですぐに読むことが出来ました。


      この本を読んでちょっとびっくりしたのは、現代人が日常生活において一番集中できない場所、というのは、実は仕事場(オフィス)で、「集中」を阻害する一番の要因は「同僚」と「スマホ」だということでした。どうしてかというと、ヒトが深い集中に入るには 時間にして 23分ぐらい必要なのですが、オフィスでは、約11分毎に、周りの人から話しかけられたり、メールやチャットが届くからです。(たしかに以前、読んだ「スマホ脳」にも人間の脳は、実はマルチタスクが凄く苦手、ということが書いてありました。。)


  一人の著者が、自身の研究をもとに見解を発表している、というのではなく、「集中力」に関する記事の抜粋集のため、それぞれが独立した記事で一貫性はないのですが、逆に「集中力」に関する参考情報や、集中力向上のヒントなんかをスキマ時間に読みながらメモって今後の参考にする、ハンディな感じの読み方をすると良いと思います。


  以下、自分の参考になった点を書きます。まず、長期にわたりパフォーマンスを高く保つため、「何に集中する」力点を置くか? これは、「小さな問い」と「小さな報酬」を繰りかえす「習慣のモデル」を確立することです。たとえば、あるアスリートがオリンピックへ出場することを決める、ではそのためにはどうしたら良いか。。」と大きな問いを持つとします。まず、この目標を細かく区切ります。「オリンピックの出場科目」を決め、そのための「基礎練習を設定」し、「練習メニュー」を決め、その練習メニューを「毎日消化していく」、、というように「大きな問い」をいくつもの「小さな問い」に分け、毎日実行していくことで「小さな向上」を得られます。(それが =「小さな報酬」となります。)このサイクルを繰り返し、「習慣づけ」ることが、長期的なモーチベーションの維持にもつながり、これが大きな飛躍となるのです。


  また、こんなことも書いてあります。「集中力強化のためには、次の「集中力の4段階」を理解すること。①集中する対象を選択する。②対象に向けた注意がさまよい始める。③心がさまよっていることに気づく。④最初の対象に集中し直す。」 集中力の維持については、このサイクルを繰り返すので、このサイクルを意識し、①を明確に、創造的に考え、持続する時間を長くする。②と③が起こった時に、それにいかに早く気づきことで、集中を妨げる要因を寄せ付けない能力が向上できるのです。


  では、集中しなければならないときに②や③が襲ってきたらどうのような対処が有効なのでしょう。本書ではそのヒントとして、「自省」すること、「瞑想」を行うことが書いてあります。


  「例えば、仕事をしていて、〆切に追われたり、目標が達成できない時、同僚との会話でストレスを感じたり、、といった状況で押しつぶされそうになると、不安・不満から不平や怒りといった負の感情が生まれます。このような時は、「私は怒りを感じている。それは認める。でも、そのことに責任があるのは何だろう。怒りなのか、怒りを感じている私という人間か。。」といった自省を行うのです。このように、自分の思考を一時停止して己を見つめ、不安が神経を刺激していることを自覚することで、集中力の回復を行うのです。これが「自省」(セルフ・アウェアネス [自己認識] で、ネガティブな自己否定的なものではなく、自分の感情に素直に向き合い、己の心と対話をすることです。


  ちなみに「自省録」という、ローマ帝国第16代皇帝のマルクス・アウレリウス・アントニヌスの有名な著書があります。彼は皇帝でありながら、軍隊と共に戦地に赴き、戦士を鼓舞しました。バラバラ死体など目をそむけたくなるような戦場の情景の中、彼は、毎夜この自分あての書簡集(自省録)を書くことで、心を落ち着けたのでと思います。(この本を読むと「自省」の意味や効果、大切さが理解できると思います。)


  瞑想(めいそう)を行い、心を落ち着けるメンタルケア「マインドフルネス」も、集中力回復に大きな効果があります。これは、呼吸を整えながら心を落ち着けるもので、日中、仕事などでできない時も、たとえば就寝時間前にベットに横になり実践すると、不安感がなくなり心地よい眠りを得ることが出来ます。


  とはいっても忙しい現代人の我々にとって、「自省」「マインドフルネス」をやる時間がないときはどうすればいいでしょうか、、 本書では、気が散りそうな誘惑が近くにある状況では、時にはその誘惑に打ち勝つ「意思の力」や「自制心」も必要だと言っています。障壁や挫折を乗り越えて目標を追求するため、この「認知制御」を鍛えることで、危機の中でも冷静さを保てたり、興奮を抑えたり、失敗や精神的混乱からも回復できるのです。実際、いろいろな研究から、「経済的成功」の要因として「自制心」の強さが「IQ」「社会階層」「家庭環境」といった要因よりも上位にくることが分かっています。


  この本のどこかに「イノベーションを目指して外の世界へと関心を向け続けるには、何にも邪魔されない時間を持ち、自省して集中力を新たにする必要がある。」と書いてありました。日々、仕事などでパソコンに向かう時間の多い我々にとって、セルフ・マインドを意識することは意義があると感じます。。