貫徹の志 トーマス・ワトソン・シニア -IBMを発明した男-
IBMと言えば、アメリカを代表する企業ですね。 IBMと言ってもコンピュータの大企業、というイメージしか持ってなかったんですが、ともかくそのIBMを 創ったのこのトーマスワトソン(シニア)です。
少し意外なのですが、ワトソン氏は正確には創業者ではありません。ワトソン氏はある事業者から CTR (コンピューティング・タビュレーティング・レコーディング・カンパニー) という統計機械、カード分類機、パンチカード機を顧客リースする会社企業の経営を任され、その会社を大きく育て上げていき、その過程で 社名を ”International Business Machines (IBM)” と変えたのです。
また、さらに意外だったのは、御本人は科学や技術系でも数学系に強かった学者肌の人間でもなかったことです。
そもそもワトソン氏は、ミシンの行商から身をおこし、その後、キャッシュ・レジスターを事業としていたナショナル・キャッシュ・レジスター(NCR)という会社で セールスマンとして徐々に出世して行った苦労人です。 ですが、ワトソン氏はある事件をきっかけにNCR辞めることになります。 そして前述のCTRへ転身、経営者としてCTRを大きくして行ったのです。
(さらに、その会社(後年のIBM) が大戦後のアメリカ・ソ連の軍拡時代の流れで、 コンピュータを開発・販売するに至った、というのがワトソン氏とコンピュータとの関わりでした。 )
ワトソン氏が前述したNCRを辞めた理由は、NCRが荒っぽい商売をしていたため、反トラスト法違反により起訴され、そのことで上司との人間関係が悪化したことです。
その会社を辞めた失業期に、不幸にも (幸運にも?)長男が誕生しました。 当時、40歳のワトソン氏は一家の主として忸怩たる思いがあったに違いありません。
「挫折」は人間を大きくします。
結果的には、それら人生の苦闘がその後のワトソン氏を人間的にも精神的にも大きくしていきました。 その頃のワトソン氏の経験が、アメリカでも有名なIBMの経営理念に反映されているのです。
IBMの歴史を知るためにも読んでも面白いですし、立身出世物語(アメリカンサクセスもの)として読んでもとても面白いと思います。
これと対になる書籍に「先駆の才 トーマス・ワトソン・ジュニア」(IBMの息子 トーマス・J.ワトソン・ ジュニア自伝)があります。
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