GMとともに

 今回、この本を読んで勉強になったのは、まず、ゼネラルモーターズ(General Motors Company, 以下 GM)という会社は、その会社の発足期にいろいろな自動車会社を買収し、その結果大きくなったということ。

 GMは今でもいろいろな自動車のラインナップがありますが(キャデラック、ポンティアック、シボレー等々)、それはもともと一つ一つ固有の自動車会社があり、それらの会社を買収しながら  ラインナップを増やしていったから、ということがわかりました。 

(余談ですが、アメリカの超資産家、デュポン家もGMの創設に関わっています。)

 悪く言えば、そういった数々の会社の寄り合い所帯なので、これらを統一しながら「事業部制」を導入し、指揮権の分権と集中化を推し進めていく過程で、手腕を発揮したのが、アルフレッド・P・スローンJr氏(著者)でした。

 (うちの会社でも採用している「事業部制」って実はGMが始まりだったのです!)

 また、スローン氏は、経営においては「集団合議」を尊重し、「一人の天才」のひらめきに頼らない経営を行ないました。

 これと対照的なのが、T型フォードで当時自動車市場を席巻していた、天才ヘンリー・フォードでした。この車(T型フォード)は大衆向けに開発され爆発的な売り上げを挙げ、車を大衆のものにしたのですが、いかんせん、多様性にシフトしつつあった市場の変化を見抜けず、やがて「多様な階層の消費者向けに多様な車種を提供する」ことをポリシーとした GMに追い越されてしまいました。(今でもメルセデスやBMWとちがってフォードはどこか高級感がないのはT型フォードイメージをひきずっているせいかもしれません。) 

 この本書で感心したのは、当時、いろいろな役員や事業部長らと経営についてやりとりした当時の議事録等を記載し、「証言」に客観性を持たせていることです。

 今のGMというと、「テスラモーターズに総資産価値で抜かれた」とか、デトロイトのゴーストタウン化した街のイメージを重ね「過ぎ去った栄光」と言ったステレオタイプを持ってしまいがちですが、実は、資本主義の総本山、アメリカの企業の中でもひときわ堅実で、前向きで、偉大な会社だったのです。 

 とにかく規模の大きい会社をまとめる経営の教科書みたいな本です。 ビル・ゲイツ氏はじめ著名な経営者もNo.1 の経営書として推奨しています。会社経営を勉強したい方は是非!