日本 3.0 2020年の人生戦略

  著者、佐々木氏によれば、2020年頃に70年周期で日本にやって来る「ガラガラポン革命」が起こり、日本に第3の近代ステージ(本書のタイトルでもある「日本3.0」)が訪れます。

 ちなみに、日本における近代の第1ステージ 日本1.0 は1868年の明治元年から1945年の世界大戦敗戦まで。第2ステージ 日本 2.0 は敗戦から後の復興期で、第2ステージ は そろそろ終わろうとしています。

 そして、2020年には「東京オリンピック」が開催されますが、そのオリンピックは団塊世代の卒業式になり、日本はいよいよ第3ステージ 日本3.0 に向かうのです。

 日本の第3ステージでは国家、経済、働き方、そのすべてに数十年、大げさに言えば100年に一度といっていいインパクトを与える修羅場(つまり変革)が訪れます。そこでは、いろいろな意味で、とにかく「動く人」が価値を持ちます。そして、著者は個人、個人が大胆に自分の「領域」を超えて行くことの大切さを訴えています。

 ところで、「ガラガラポン革命」という概念ですが、これは社会学者で京都大学名誉教授の竹内洋氏が提唱していて、「新潮45」(2015年8月号)に寄稿した『「第三のガラガラポン革命」が起こる周期』という記事から著者が引用している言葉です。

 この「ガラガラポン」(音が面白いですね!)と言う語源は、くじの入った箱を振り、くじが出る時の「ガラガラポン」という音にあり、そこから転じて社会のシステムを根底からガラッと変えたりすることなどの意味で使われるようになったようです。

 この本ではこれからの「日本の3.0革命」時代に必要な概念を「国家論」「経済論」「仕事論」「教育論」「リーダー論」などに分け提唱していきます。

 この本書の中で私が一番感心したのは、「教育論」です。

 佐々木氏の主張では、アメリカのエリートと日本のエリートを比較した場合、優れているのはアメリカのエリートです。アメリカでは科学、文学、ビジネスに精通したエリートを輩出し続けていて、その例として、ビル・ゲイツ氏、グーグルの元会長エリック・シュミット氏を挙げています。(そういえば、アマゾンのジェフ・ベゾス、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ両氏もアメリカの一流大学出で大変な読書家ですし、この範疇に入りそうです。)

 佐々木氏は、その両国のエリートの差は「教養教育」(一般教養)にあると論じています。アメリカの学生は「知の千本ノック」つまり、徹底的に「読み、書き、話す」ことで、インプット、議論、アウトプットを繰り返し知の筋力を鍛錬しているのです。 

 本書において、この辺の佐々木氏の論じるアメリカの教育論については感心することばかりです。(詳しくは、本書の説明に譲ります。是非御一読を!)  そして、本書ではハーバード大学やスタンフォード大学の教養教育の概要を説明しています。

 さらに、スタンフォード大学における課題図書として、スタンフォード大学生が読むべき教養書50冊を紹介しています。(以下少しだけ紹介します)

*「歴史」ヘロドトス 「饗宴」プラトン 「国家」プラトン

*「政治学」アリストテレス 「君主論」マキャベリ 「国富論」アダム・スミス

*「社会契約論」ルソー 「人口論」マルサス 「アメリカの民主主義」トクビル

*「資本主義と自由」ミルトン・フリードマン 「資本主義、社会主義、民主主義」シュン ペーター 

*「旧約聖書」「新約聖書」「神曲」ダンテ 、、、等々

*「文学」からは以下、シェークスピア、スタインベック、T.S.エリオット、オースティン、カフカ、バルザック、等

*「種の起源」ダーウイン

 ここで私が感心したのは「教育」ってやっぱり「読み、書き、話す」だよね。。っていうすごくシンプルな事でした。(いわゆる「温故知新」っていうやつですね。。。)

 そして、その3つの要素を貫くのは徹底的に自分で「考える」こと。

 IT、インターネット全盛の時代、そして、やがて到来する AI 時代 。。。。そういった時代に、我々一人、一人が磨いていかなければいけない「武器」とは、最終的には、やはり「知性」なのかもしれません。。。

 著者の佐々木紀彦さん。。。うーん、本書における論旨の展開、そして 平易に、かつ 真摯に説明する姿勢。ひさしぶりに「日本の知性」と呼べる人にめぐりあえた感じです。私的には本書、大推薦です。 

Hisanari Bunko

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