NewsPicks Magazine vol.2 Autumn 2018

       朝礼でも紹介しました、「NEWS PICKS」マガジン2018秋号です。特集は「ニューエリートの必読書500」。 まず、この本の前書きを一部抜粋します。「世界を変えるイノベーターたちの共通点。それは、読書家であることだ。若き日には文学やSF小説などに親しみ、学生時代は古典や学問に親しみ、社会人になった後も、寸暇を惜しんで読書にふける。読書を通じて、時空を超えた対話を行うことが、新しい発想と行動へとつながるのだ。今の時代は、ネットやスマホの普及により、あらゆる情報にアクセスできるようになった。しかし、スマホでの情報収集は、どうしても断片的になりがちだ。今なお、体系的な知識をじっくり吸収し、思考を深め、行動に活かすには、読書に勝る体験はない。」

  この本は昨年の10月ぐらいに、東京の丸善へ行った時、棚に大量に置いてあるのを見かけ、つい購入してしまいました。まず、その表紙(上の写真)と特集のタイトルが気になり何気に手に取りページをめくったのですが、表紙がタレントのような若者(前田 裕二氏)がたくさんの書籍に囲まれ、その書籍を枕にして横になっているポーズの、前田さんの放つ「挑発感」に引きずられて見入ってしまいました。以前だと、世の中のおじさん諸氏から、生意気だとか不遜だとか思われるような感じの写真ですが、私的には、この不遜なポーズに「日本の若者世代からのメッセージ」、というか「決意表明」みたいなものを感じました。とにかく、他のビジネスマガジンとは一線を画すような構成と内容が濃かったことを憶えています。

  これまでいくつか書籍のガイドブックを紹介しましたが、今回のこの「ニューエリートの必読書500」の特徴は、主に30代のトップ起業家が推薦しているものにフォーカスしていることです。書籍の紹介本って、例えば、経済新聞で有名会社の社長や代表方が選んだものだったり、出版会社のビジネス書籍担当者が選んだものなど、選考者によってだいたい書籍の内容が決まってしまいます。今回の選考者は30代のトップ起業家ということで、選ぶ書籍はやはり他のものとは違います。印象としては、「選択する本の年代幅と分野の範疇が広い、換言すれば、興味の対象が広い」と感じました。また臆せず英語の書籍も選んでいる点も新鮮に感じました。(前田さんの場合は、松下 幸之助(「道をひらく」)、金谷 治(ただし注釈のみ)(「新訂 孫氏」)、R・ドーキンス(「利己的な遺伝子」)、Richard Wiseman (「The Luck Factor」)などをピックアップしています。

   本書の巻頭は、30代前半で起業でブレークスルーを起こした3人(前田裕二氏、落合陽一氏、そして高橋祥子氏)のインタビューで、それぞれのインタビューを通じて思い思いの読書観を披露しています。(ちなみに、皆さんいずれも1987年、1988年生まれの30代前半です。)前田さんはUBS証券に入社し、NYから帰国後 DeNAへ入社。現在「SHOWROOM株式会社」社長です。落合さんは以前紹介しましたが、デジタル分野でマルチに活躍。高橋さんはゲノム解析サービスや創薬支援事業の「ジーンクエスト」代表です。インタビューを通して、前田さんは「人生の必読書10冊」、落合さんは「テックを知る7冊の必読書」、高橋さんは「生命科学の推薦書10冊」をそれぞれ挙げています。

   例えば、前田氏は年間400冊の本を読む生活を10年間続けています。前田さんにとって読書とは「行動」を発芽させる養分で、「単なる情報インプット」の道具ではなく、「大量のアウトプットをするための動機やその道筋をつくるためのもの」です。前田さんは兵法書を読むのが好きで、「孫氏」を愛読していますが、それは「生きるか死ぬかという真剣勝負の中で紡ぎ出した考え方は、人間が考える限り最も真理に近い成功法則だと思うからこそ『孫氏』の内容を全力で信じるのだ。」と語っています。皆さん、読書に対する考えが深く、しっかりしています。また、読書に限らず、自分の哲学をしっかり持っていて、考え方が独自で、未来志向で、閉塞感がまったくない。。うーん。。彼らに限らず、今の30代はこれからの時代を長期に渡り社会の第一線で戦う世代です。東京オリンピック後、人口減少、GAFAやオートメーション化、AI 。。。これから激変する彼らの100年ライフ社会における(彼らの)今後70年(100年-30年=70年)を彼らはどう乗り切っていくのか? 日本の30代世代の戦略を彼らの著作物や(彼らの)読む書籍を通して見極めたいですね。

   上記の他、本書において良かったのは「ニューエリートの必読書 海外編」として、ビル・ゲイツ(元マイクロソフト代表)、マーク・ザッカーバーグ(フェイフブックCEO)、ジェフ・ベゾス(アマゾンCEO)、ラリー・ペイジ(グーグル前CEO)、ティム・クック(アップルCEO)、イーロン・マスク(スペースX、テスラCEO)や ウォーレン・バフェット(投資家)、ピーター・ティール(投資家)、バラク・オバマ(前アメリカ前大統領)、そしてスティーブ・ジョブス(アップル創業者)らの推薦図書リストも網羅していることです。さらに、ダメ押し特集として、アメリカのトップ10の大学の課題図書の掲載もあります。(ハーバード大学、スタンフォード大学、イェール大学、マサチューセッツ工科大学、プリンストン大学、コロンビア大学、シカゴ大学、デューク大学、ペンシルベニア大学、ブラウン大学)どんな本がトップ10入りしているかは、書店へどうぞ。。

   ところで、「NEWS PICKS MAGAZINE」ですが、これは 季刊誌で、経済ニュース共有アプリ “News Picks”(「株式会社ニューズピックス」が運営・開発している)から派生したマガジンです。( “News Picks”は、2013年9月に提供開始で、30を超える国内外の新聞・雑誌の経済ニュースが閲覧できるアプリです。) 実は、この株式会社ニューズピックス の CCO(最高コンテンツ責任者)は 以前、この欄で御紹介した「日本3・0」の著者、佐々木 紀彦氏です。「日本3.0」では、佐々木氏が「これからの30代に期待する。」と書いていましたが、このマガジンでも前述の3名の他、30代が紙面をにぎやかにしています。ちなみに、 最近(2019年1月)、この NEWSPICKS MAGAZINE の最新号(NewsPicks Magazine vol.3 winter 2019)が発売になりました。今回の特集は〈未来の子育て〉です。