【新版】ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する
以前、御紹介した「ブルー・オーシャン戦略」の [新版] です(著者/W ・チャン・キム、レネ・モボルニュ)。 「ブルー・オーシャン戦略」は初版が2005年で、この新版は、2005年版にいくつかの章を追加・書き換を行い、2015年 に出版されました。 最近では、この新版の他、「ブルー・オーシャン」(以下、単に BO と記します。)関連書籍として、「ブルー・オーシャン・シフト」(BOプロジェクトの成功と失敗を、比較・分析。 その研究から、最小のリスクでBOを創造、支配する手順とプロセスをまとめた)や、「ブルー・オーシャン戦略論文集」(BO戦略の著者が、『ハーバード・ビジネス・レビュー (HBR)』誌上に掲載したブルー・オーシャン戦略の原点から最新のものまで、重要論文10本を時系列に収録。)などが出版されています。 2005年に発表したものが新しい内容を加えて10年後に再発売され、さらに、関連本が発刊されるということは、BO戦略が広く社会に受け入れられている、ということの 証左だと思います。
「BO戦略」とは、簡単に言うと「競争の激しい既存市場を『レッド・オーシャン(赤い海、血で血を洗う競争の激しい領域)』とし、競争のない未開拓市場である『ブルー・オーシャン(青い海、競合相手のいない領域)』を切り開くべきだと説く。そのためには、自分の業界における一般的な機能のうち、何かを『減らす』『取り除く』」、その上で特定の機能を『増やす』、あるいは新たに『付け加える』ことにより、それまでなかった企業と顧客の両方に対する価値を向上させる『バリュー・イノベーション』をその土台とする」戦略です。(この説明はWekipediaから引用。ただしこの説明だとBO戦略を上手に伝えていないのでBO戦略をより深く理解したい方には本書(旧/新)を直接読むことをお勧めします。)
この新版における、「BO戦略」の本質は「旧版」のものと全く変わっていません。「旧版」との違いは、内容的に言うと「監訳者による序文」が加わり、第9章~第11章までがほぼ新しい内容として加筆されていることです。
本書「新版」において、まず、著者は「BO戦略は(2005年以降さらに)重要性が高まっている」と指摘しています。理由としては、全世界において、既存の市場(レッド・オーシャン)では「需要よりも供給が過多になっていること」、「数々のグローバル・トレンドが誕生してきたこと」を挙げています。 そして、その グローバル・トレンド について、著者が指摘しているのは、「創意工夫に満ちた新鮮なソリューションを求める声の高まり」や「ソーシャルメディアの普及と影響力の拡大」です。 特に、(「カオス・シナリオ」でもメンションしましたが、) SNSがほぼ全世界で利用できる現在、製品・サービスの情報は(以前は)企業が管理していたが、近年は個人が力を 持つようになり、その結果、かつてないほど、企業側の努力(卓越した製品やサービスの提供)がマストになっていることを指摘しています。 「世界のほぼ全員が「拡声器」を持つ現状では、二番煎じである事実を隠したり、誇大広告をしたりしようにも、すぐに見破られてしまう。」
また「需要と成長の中心地の将来的な変化」も(理由として)挙げています。 今後、世界的に見て成長市場として、ブラジル、中国、インドなどが期待されますが、 これらの新興経済大国は、単純に世界で生産される製品やサービスの消費を期待されているわけではありません。なぜなら、人口は膨大になりつつあり、また、一人あたりの収入は増加傾向にあっても依然として低い水準にとどまってるからです。 その一方、新興経済大国の膨大な数の国民は(我々先進国と同様)インターネット、携帯電話、テレビのグローバル・チャンネルなどに接する機会が増えて、(購入する製品・サービスに関して)洗練度や期待の水準を高めていることなどに加え、一般的な知識や判断力を蓄えつつあるからです。そこで、これら(新興経済大国)の顧客の心をとらえ、財布のひもを緩めてもらうには、差別化と低価格の両方を兼ね備えた魅力的な製品・サービスを送り込むBO戦略が必要になるのです。
さらに、日本においても実質成長が止まっている(または、下方成長?の)現在、「求められるのは新しいビジネスモデルの創造、新しい顧客の創造、そして、 既存ビジネスの枠組みを変えることである。これからの日本でこそ、BO戦略が求められる」と語り、日本で躍進しているBO候補事業・起業の実例を数多く紹介しています。(「受験サプリ」(リクルート・マーケティング・パートナーズ)、「JINS PC」(ジェイアイエヌ)、「オフィス・グリコ」(江崎グリコ)。。他)
私的にも「BO戦略」の考え方は現代のビジネスに有効であると感じますし、ぜひ一読をお勧めしたいので、ここではこれ以上の説明は控えますが、今回この新版を読んでよかったのは、第11章「レッド・オーシャンの罠を避ける」でした。ここでは、「BO戦略」を考える上で、「レッド・オーシャン戦略」と混同しやすい項目をわかりやすく説明しているからです。例えば、BO戦略を取る場合の顧客との関係、従来からの本業との兼ね合い、先進テクノロジーの導入、、などこの章における疑問、誤解を理解することにより、BO戦略の本質を理解できると思います。(余談ですが、著者の一人、W・チャン・キム氏の母国、韓国 の大企業「サムスン電子」はいち早くBO戦略を導入した会社で、1998年に「バリュー・イノベーション・プログラム・センター」を設立、早い時期に積極的に新興国市場に参入し、飛躍的成長を実現しました。)
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