一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書
皆さんは「歴史」に興味ありますか?
どうして自分が住んでいる世の中はこんなふうになっているんだろう? とか、どうしてあそこの国はあの国と仲が悪いんだろう。。。そうやって毎日疑問に思う、今の世の中や、社会や国の成り立ちは、タケノコが成長するように昨日・今日突然できたわけではありません。長い長い歴史の積み重ねの結果が今我々が住んでいる社会なのです。
だからやはり、今の世の中の成り立ちや仕組みができた過程を理解するのにいいことの一つは、歴史を学ぶことだと思います。
例えばコロナ感染症のコロナ禍において、社会活動が実質ストップした時のような我々がめったに体験することがない大きな出来事の時、当時、不安な人々をことさらあおるようなマスコミ報道の風潮がありましたが、ライフネット生命保険の創業者、出口治明さんは、大正時代(大正7年~9年)に日本で「スペイン風邪」が流行った時の当時の社会を例にとって、「コロナ感染症の拡大は、(大正の時の)スペイン風邪と同じで、それはいわば、巨大台風が吹き荒れているのと同じ状況。だから今は我慢して家に閉じこもっているのがいいのです。」と、平然と話していたのを憶えています。そして、騒ぎすぎるマスコミや社会を揶揄するような言い方で、騒ぎ立てず、落ち着いて行動することの必要性を強調していました。出口さんは、業界屈指の読書家で、特に歴史を得意とする方ですが、出口さんのお話から、「歴史を学ぶ」ということは、過去の出来事から未来をある程度類推し、巨視的な流れで物事の流れを理解する、ということなのだと感じました。(ゆえに大げさにパニックに陥ることがない。)
一方、大きな出来事が起こった時に、(歴史という)過去からの視点をもっていない人ほど、マスコミの不安をあおるような論調に、乗せられ大げさに不安がったり、また、慌てたりするのではないか、と感じます。以前紹介した「史上最悪のインフルエンザ / 忘れられたパンデミック」(著者・アルフレッド・W・クロスビー)の最後の方でも、あんなに世間んで騒がれたスペイン風邪も、流行が去った2,3年後には人々の記憶からすっかり忘れられ、その後の研究もあいまなうちに終わり、結局ウイルスの起源も特定できなかった(しなかった)。。ということが書いてあったと記憶しているのですが、現代も同じような状況で、コロナ禍では、「これからは生活様式がまったく変容する。」といっていた人もいましたが、今ではすっかり忘れられ、社会はコロナ禍以前の状態に戻っているように思います。(これが正に、出口さんの言いたかったことなのでしょう。。)
このような歴史を俯瞰できる視座を持つことが歴史を学ぶ意義だと思いますが、一方、個人的には正直なところ、歴史の学びというのは、学校で習ったように「年号」と「出来事」をセットにして覚える、というのがマストだった記憶があり、どうも苦手だったことを覚えています。つまり、「歴史」という科目は、暗記が主体で自分が考える、という余地がほとんどない科目、というような変な先入観があったのです。
また、大人になって歴史を学ぼうとがんばって良書と言われる歴史書をいきなり読もうとすると、その主題が詳細に掘り下げられ、書かれている主題(出来事)が起こっている周辺地域の事情、その時代の社会背景の流れがわからず四苦八苦することがよくあります。たとえばイアン・カーショーの「ヒトラー」。名著と言われていますが、やはり当時のプロイセン、オーストリア周辺国の事情が分からない、また、「スデーデン併合(1938年)」。併合といわれてもその地域の過去の出来事がわからない。。。(ということは当時のヒトラーがどういう視座をもって行動していたのかがわからない。。。)というように歴史学に興味のある篤志家以外の一般人にとって「歴史」という学問は学ぶには少しハードルが高いように感じます。
しかし、今回紹介するこの「一度読んだら絶対忘れない世界史の教科書」(著者は山崎圭一さん)は以上の点で画期的な変更を行なっています。年号と出来事という「歴史勉強」の枠組みを壊して、歴史を(小説や映画のように)「ストーリーで語る」、という構成をとっているのです。
つまり、小説のように視点(つまり主人公の視点)があちらこちらに動かずに、極力一つの視点(つまり、一つの国や特定の地域の歴史をそのまま、大河の流れを行く船のように)で一気に読み進めるような構成になっていているのです。むやみにあっちの国、こんどはこっちの国と説明する場所が変わらないように工夫されてるのです。要するに世界史の教科書で学ぶ地域や国の歴史の流れ(順番)を再構成し、一つの大河の上流から下流まで一気に下っていく旅ができるような構成にして、読者が理解しやすいようにしているのです。本書の著者の山崎さんは高校の先生でyou tubeに自信の授業を公開している、ということですが、彼の説明する言葉も大変理解しやすく、とても親しみやすいと思いました。
本書の最初に実際の日本の学校で習う世界史の流れの順番表がありますが、特に近代史においては、視点がめまぐるしく移動しているのがわかります。今更ながらですが、我々が習った世界史の教科書って過去から現代までを説明するのにあっちの地域へいったり、こっちの地域へ行ったりとめまぐるしく変わっていたことを認識できます。年号暗記と同様に、この視点の移り変わりの多さも、歴史勉強における難しさの一つだったのだと理解できました。年号を省き、説明する地域の視点を極力変えず、できるだけ直線的にストーリーで歴史を語る(理解する)、これこそある意味、私のような社会人にとって、理想的な歴史の学び方だと思いました。
今回とくに良かった思うのは、ドイツの大まかな流れです。イギリスやフランスに比べ、そもそもドイツの成り立ちは(特に東フランク王国からはじまり、ローマ教皇の権威でつくられた神聖ローマ帝国がその起源だったせいか(つまりまず大領主が寄り合い、そこに小領主がくっついて国を形成していったので)どうも他のヨーロッパの国と比べ、国としての領土境界があいまいでしたが、本書を読むと、オーストリア・プロイセンが纏まり、その後プロイセンのビスマルクがヨーロッパの外交をリードし、ドイツ連合のようなまとまりを主導していったことわかりました。第一次大戦の本を読むと、いつもドイツがひとつの国になっていないようで、周辺国の様子がはっきりせず、前述のヒトラーの自伝を読でもプロイセンやビスマルクに対するヒトラーの考えが述べられている記述が理解できなかったのですが今回、そのあたりの自分の理解の一助になったような気がします。その他、中世で起こった三十年戦争、他の宗教戦争、アジア(中国)では、中国の最後の王朝である清の滅亡後の軍閥時代から、日本の占領、国民党と中国共産党との共闘、第二次大戦後の中国共産党による「中華人民共和国」の樹立から国民党の台湾への逃亡の流れに至る近代史も比較的わかりやすく解説されていました。
まず、歴史上の興味ある出来事を知ろうとする場合、まずはその出来事の前後の歴史や周辺地域の出来事を対局をおさえて流れをつかみ、そこから徐々に焦点を絞って読みこんでいく。というやり方がいいような感じがしました。大きな歴史の流れをつかむのに、本書はとても参考になると思います。
0コメント